周りから攻め患部が治る仕掛け作り
昔から名人と言われる先生の治療は良く見学した。そういう時いつも感じることは、「そんなに弱い刺激でいいの?」という事ばかりである。「そこまでやるんだ」という感想より、「そんな刺激で効くの?」と感じていた。この仕事を45年続けてわかったことは、「名人と言われる先生は患部を直接刺激するというより、周りから攻め、患部が治る仕掛けを作っている」ということである。言葉で言うのは簡単だが、この「患部が治る仕掛け」をどう作るかがその先生の価値となる。名人の頭の中ではわかっているのだろうが、見ているだけでは全く伝わらない。質問しても、「そんな事を考えているの?」という話ばかりである。実はこの仕掛けだが、解剖学・生理学・病理学はもちろんだが、医学史や民間医療、インドやチベットの伝統医学や中国哲学や細菌学や宇宙の話まで、実に壮大な世界観から考え抜いている。これでは分からないわけだと思ってしまう。ただ言えることは、「神様の気持ち」から考えると比較的、わかりやすい。神様が身体を作られたときに、「肩はいっぱい動いたほうがいいし、腕も使えないと困る。そうなるとここに神経を通すしかないなあ。狭いけどいいや。」そんな事を考えられながらお作りになったと思う。そこがわかると患部が治る仕掛けはそんなに難しくない。そんな考え方が出来るようになり、「神様、やっぱりここを通すしかなかったとは思いますが狭すぎますよ。」と一人でブツブツ文句を言いながら、「他にはないものなぁ」と神様の気持ちの一部を分かったつもりになっている。その考えで意外と治療はうまくいく。