良きに計らえ

この言葉はテレビなどでよく殿様が家臣に言っている。
これは、「あなたの判断力と裁量に任せるので、状況に応じて良いように、うまく処理してください」という意味だ。
さてこの「良きに計らえ」ですが、治療にも当てはまる。
今日、来た骨折の患者が、「前回より折ったところが痛む」と言うので調べたら、前回は腰が痛く折ったところが目立たなかったが、今回は腰が楽になり、患部が目立つようになっていた。この患者の骨折部位には熱があったので、冷やすように指示していたが、この冷やし方が中々難しい。かなり熱を持てば氷を使うが、それほどでなければ冷湿布で十分である。
冷やし方も範囲や時間があり、「良きに計らえ」と言いたくなってしまう。
しかし一般的に患者は、「氷で冷やすの、冷湿布?どっち?」と答えだけ欲しがる。
こちらは「かなり熱ければ連続で氷を使うし、そうでなければ冷湿布だ十分」と言いたくなってしまう。そして冷やす場所もいつも同じではなく、熱を持っている場所を見つけてほしい。
中々そのへんの微妙なニュアンスが伝わりにくい。
おそらく昔の方も微妙なさじ加減をいちいち言うのが大変なので、「良きに計らえ」で終わらせていたのだろうが、実に的を射た便利な言葉である。
日本には昔から、「甘塩っぱい」という微妙な味付けがあるが、治療も同じで、体の要求することに丁寧に対応してこそ、効果が上がるのである。