どうして腕と太腿は自覚が出ないのですか?
よく患者さんには、「腕と太腿は自覚が出ない」という話をしている。これは仕事をやりながら気がついたことだが、理由が分からない。ある時患者から、「どうして自覚症状が出ないのですか?」と聞かれて困ってしまい、「そんなの神様に聞いて」としか答えられなかった。それから何となく答えられなかったことが心に引っかかり2年ほどしたある日、脳の論文を読んでいた。それは「分離脳」とか「分割脳」という話で、右と左の脳は脳梁というところでくっついているのだが、それを切って分離させてしまう話である。初めてのうちは右と左の協調運動ができないのだが、段々出来るようになるという内容だった。それを読みながら、「脳が生まれたときから分断している人はいない。しかしこの論文は本来は起こらないことだけれどももし起こったらという前提で話をしている。ではもし腕と太腿に自覚が出たら・・・」と考え、ピンと来るものがあった。
それは人類がまだ狩猟生活をしていたとき、女房子供を洞穴に残し男は狩りに出る。場合によってはいくつも山を越える。そんな時、獲物を獲得して、担いで帰るときに腕が痛いとか山を越えるたびに足が痛いと感じていたら、洞穴まで獲物を運べない。女房子供が餓死してしまう。そのために腕と太腿に自覚が出ないように、神様がしたのではないだろうかと思ったら、自分なりに納得してしまった。これは証明のしようもないので検証など出来ない。
実はこの自覚が出ない腕、現代社会ではパソコン病やスマホで酷使している。それが全て肩や首の痛みに繋がっている。だから当院で肩や首の痛みを訴えてくる方にはまず腕から治療するのである。しかしまだこの事は世間ではあまり知られていない。腕を一切治療しない治療院もあると聞く。しかし経験上、肩と首の治療に腕の治療はかかせない。当院の常連さんは皆知っているが、まだまだ世間の常識になるには時間がかかりそうである。