膝の熱に関して

以前病院のリハビリで30代の方の膝を治療をしていたが、中々改善せず困ったことがあった。
怪我の内容は軽い靭帯損傷だったと思うが、固定やリハビリなどで2ヶ月もしないぐらいで回復するのが常である。
しかし3-4ヶ月通院されていてこちらも焦り、担当の外科部長に相談しても、「痛ければ注射はするけど・・・。」で、なすすべがない感じである。
こちらはリハビリで毎日顔を合わせるので、色々と治療法を変えてみたが効果がない。
こちらも腹をくくって詳細に何が起こっているのか調べたら、患部の熱がどうやっても取れないことが分かった。
普通は冷湿布で冷やすのだが、いくら張り替えても熱を持つ。
では氷でということで1時間ぐらいやってもらったら、少し楽だという。
しかしまだ熱を持っている。
段々冷やす時間を増やし、ついには一日中になってしまった。
取り敢えず凍傷の心配はないが、ここまで冷やしても大丈夫かと心配しながらやったことを覚えている。
連続で冷やし続け確か1週間ほどで、患部の熱が治まった頃には痛みも引いていた。
こんなに冷やさないと痛みが取れなかったのかと、自分がイメージしていたものとの違いに愕然とした。
それ以来、膝の熱が気になる。
少しでも膝頭を押さえて熱に左右差があれば、必ず冷やしている。
1度の温度差というのは大変なものである。
時々この症状で来る方がいるが、膝の痛みは熱を取らない限り数年で続く。
本人が途中で諦めてしまうとその後に待っているのは坐骨神経痛である。
しかしこの膝の熱対策はあまり知られていない。
この熱のことがわかってから、膝治療が格段に楽になった。

【冷やし方のコツ】
時々患者が創意工夫をして、こちらが氷で冷やせと言っているのに、塩を入れたり、アイスノンを使ったり、酷い方になるとドライアイスを使う方がいる。こちらは長年ほぼ全てのやり方を試して、一番安全で確実な方法を指導しているのだが伝わらないことがある。氷は出来ればクラッシュ氷がいい。大きすぎると皮膚に密着しなくなる。入れ物もこちらはビニール袋2枚と言っているが、氷嚢を使う方がいる。これだけで冷え方が違う。当てる場所は大体2ヶ所で、一つは、「痛いところ-膝の内側などが多い」と「膝の裏」である。理由は膝の動脈の本幹が膝裏を走っているので、そこを冷やすと熱が取れやすい。自宅でする場合は、溶けたら又変える。寝る前も冷やしたままにしていただきたい。写真の包帯はエラスコット4号で太さが10cmを当院ではよく使っている。ビニール袋を固定するためである。冷やし続けて反対側の痛くない方と比べて温度が同じになるまで冷やし続ける。普通は数日かかるものである。外出時は冷たい湿布(パテックス冷感がお薦め)をして、ネット包帯などで固定して頂きたい。出来れば30分に一度取り替えて頂きたいが、出来なければ1時間毎でもいい。時々かぶれる方がいるが、そういう方は湿布のセロハンを取らなければ大丈夫である。熱を取りたいだけなので、薬効はなくても効く。