職業別の身体の使い方

お花の先生が、「最近65才を超えて身体が辛くなってきた。今までは75才ぐらいまで仕事が出来ると思っていたが、このままでは70才まで出来るか危ない。先生は連続で仕事をしてくたびれないの?」と聞いてきた。これは以前、「○道と身体の使い方」でネタを書いたことがある。道にはそれぞれ独特の身体の使い方があり、それは端から見てとても美しいものだという事を書いた。我々の仕事も力仕事と思われている部分がある。「長い時間、マッサージして良く大丈夫ですね。」と言われるが、私自身、力でやったら5分と持たない。体重移動しながらやれば何時間でも持つ。少しまとめてみたい。

  1. 治療の仕事に慣れない方は力でやるからすぐに疲れてしまう。日に5人治療したら限界となる。
  2. 力ではなく、体重移動でこなせば疲れない。技術は身につける必要はあるが、身につけば3人、5人、10人治療しても変わらない。
  3. その上の治療は「虚」が出来るようになると、治療すればするだけ自分の身体が楽になる。これは以前、「墟の話」の中で書いたのだが、この仕事極めると押すのではなく引くのである。文字にすると言葉遊びみたいになってしまう。体重はかけながら患者の身体の中から引っ張り出すのである。お花でも花瓶に入れるんだけど、引っこ抜けと言うそうである。この「虚」が出来るようになると仕事をしただけ自分の身体がほぐれる。だから何も予定のない定休日など誰か来ないかなぁと思ってしまう。安静にしているより「虚」で身体を動かしている方が楽なのである。

よく画家の方が長生きをしている。ピカソや北斎も長命であった。おそらく仕事をしながら何かの健康法を掴んだのではないだろうか。先日、夏休みに長野県小布施の北斎晩年の天井画を見てきたが、その大きさ、力強さ、迫力に圧倒されてしまった。「画狂老人」と言っていたそうだが、何かの健康法を体得していなければとても書けるものではない。日舞や他の芸能でも長老は多い。おそらく職業別に独特の健康法があるに違いない。すこし時間をかけて色々な方に話を聞いてみたい。