おとなしい患者
常連さんが腰が中々良くならないという。太腿を触った途端硬さから、「胃炎が数ヶ月か階段の上り下り・サッカーなどをやったかのどちらかが原因です。」と言ったら、「サッカーと階段はやっていません。」と言うので、「では胃炎でしょうね。」と言って他の所を調べても、「胃腸炎」の反応しか出ていない。胃の内視鏡はと言ったら、「この間やって問題なしです。逆流性食道炎の薬が出ています。」というので、本人は検査と治療はちゃんとやっていると言いたいのであろう。しかし胃の内視鏡の結果というのは「胃カメラと美人投票」でも書いたが、空っぽの胃を診て問題ないと言っているだけで、食べ物を入れてちゃんと仕事をするかどうかはわかない。薬を飲んで胃の反応があるということは薬が足らないか、合っていないかである。長年同じ薬を飲み続ければ効果は弱くなってしまう。本来なら担当医に、「薬は頂いていますが、少し胃が重い。」と言えば薬が変更か追加になるのに、日本人の患者は皆おとなしい。「先生がちゃんと診てくれているのだから問題はない。多少の違和感はあるが検査でもひっかからないからこれでいい。やたらなことを先生に言っては失礼になる。相当酷くなるまでこのままでいいや。」と思っている。我々から診るとこの胃の問題で腰痛が治らないのである。例えば腰の痛みを止めるために痛み止めを飲んだとする。薬が効いている間は腰は楽かもしれないが、その薬で下痢をしたとする。そうすると今度は下痢が腰痛の原因になってしまう。しかし痛み止めはやめられず悪循環になってしまう。こういう問題はほんの少し各科の先生が幅を拡げて診て戴けると解決する。消化器の先生は、「胃薬で他はおかしくなっていないか?ちゃんと効いているか?腰などに負担はかかっていないか?」と言って戴けるだけで解決する。整形も腰痛の原因を骨と筋肉・神経・血管だけでなく、「お腹はどうだ?」と聞いてくれるだけで解決する。患者さんには詳細な情報を伝えて頂きたいと思っているが、「おとなしい患者」と「自分の専門分野だけ診る先生」で問題は何時までも続く。犠牲になるのはいつも患者である。