患者さんが求めているのは医療
以前、医学と医療でも書いたが、患者さんが求めているのは医療である。例えばリウマチを患っている場合、病院に行くと、「この患者はリウマチ」というレッテルを貼られる。リウマチだから○○の検査をして、リウマチだから△△の薬を飲む。リウマチだから□□は仕方がない。これは医学であって、医療ではない。医学で病気を追っかけると人が消えてしまう。その方が何を感じ、何を思っているかは大事ではなく、どう病状が変化したかが大事である。だから医学では、「がんの末期で打つ手はありません。病院に来ても無駄です。」となってしまう。しかしその患者は生きている。治療法がなくても生きている。ほんの少し腰を揉んで食欲が出ただけでも大きな喜びである。これは医療である。我々が行っているのは医療である。最近、病院でも床屋さんや美容室やエステ、喫茶店やレストランが入っているところが増えてきたが、私でも長期入院していればそっちに行ってしまう。少しでも快適に生きたいわけである。「医学では死は敗北」という考え方が根強い。我々から見ると誰でも死ぬのだから、毎日の幸福感が大事と思ってしまう。がんの末期で治療法がなくてもお風呂は気持ちが良いし、飲めればお酒は美味しい。少しずつではあるが、病気だけを診る医学から、人に優しい医療にようやく変わりだしてきた。