肩関節の治療の難しさ
肩の脱臼癖のある患者が、また痛めたという。当然、レントゲンを撮ったが、そんなに悪くないという。しかし経過が良くない。こうなるとMRIで内部をちゃんと診て戴かないとどうなっているのかわからない。MRIの結果は「関節唇損傷-関節唇とは関節のまわりに唇のように付着している軟骨で、関節の安定に不可欠な組織の事」とのことで、レントゲンではわからない情報が掴めた。しかし基本的に関節唇は自然治癒することはなく、程度によっては手術となる。しかし本人は手術を受ける気持ちがない。ある程度のリハと痛みの治療ぐらいで様子を見た。しかし「肩が外れる感じがある」との訴えにより、こちらは、「腱板(肩関節を支えている4つの筋肉)断裂」を疑った。こうなるとかなりの専門家に診て戴かないとこういう問題は解決しない。たまたま高名な先生とのご縁があったので、改めて診て戴いたら、「関節唇損傷も腱板も何の問題もない。関節が硬くなっている五十肩みたいなもの。リハで十分。」との診断にビックリ。前回のMRIを撮ってから数ヶ月経っているので、治ったのか誤診だったの全くかわからない。肩が外れることに関しては、「反対側の肩関節が弱い。何度か外しているでしょう。だからその恐怖心ですよ。」との診断に、またビックリ。これは我々にしたらよくある話で、たまたまMRIで写らなかったダメに、診断がぶれたり、時期がずれることによって、病態が変化したり色々なことが起こる。こういう場合やはり、「肩関節に関しては○○先生」というのが1番信頼できる。とくに肩は360°動くだけに、ほんの少しの違和感で症状が出てしまう。股関節や膝でも荷重の問題が常にあり、関節の治療は中々一筋縄ではいかないのが常である。こういう場合困るのはやはり誤診である。以前から、「的確性」については何度もブログを書いているが、少し治療してうまくいかなかったら、「診断合っているの?」「リハの方針合ってる?」と自問自答しながら、進むしかない。名医であってもリハの専門家ではないので、微妙なところで意見が違ってしまうことはよくある。案外正解への道は細くて長いものである。