以前に年配の男性が、「100mも歩けない。」と言う。
「休むと回復するが、近くの駅まで何回も休まなくては着かないので不便だ。」と言う。
お話を伺いながら、もしかしたら血管の病気かもしれないと思い「当院で出来る治療を3回します。効果がなければ血管の可能性があるので、その時は血管外来へ行って下さい。」と説明した。
3回目の治療が終わっても全く楽にならないという。
約束通り血管外来へ行ったら、両側の血管狭窄ですぐにステントという血管を拡げる物を入れて、手術後10km歩いても何ともないという。
その後いたく感謝された。
最近、同じような症状で来院された方は、「腰のレントゲンを撮って異常がなく、痛みが取れないので神経ブロックを受けているが、効果が続かず、外科や整形でも原因が分からない。」と言う。
医療が縦割りで自分の領域はやるが、あとは知らないという感じだ。
患者の不安は増すばかりで、数カ所行って分からないと言われると希望をなくす。
しかし、痛いので藁をも掴む思いで、他をあたる中、当院に来院されたのであろう。
話を聞くとどうも血管の病変なので、「血管外来は行ったのか?」と聞くと、誰もそんな事を言ってくれなかったと言う。
整形、外科、神経ブロックの先生が一言言ってくれれば済んだ話である。
もし自分の領域で結果が出なければ、◯◯の可能性があるので、何処何処で診てもらえと指導すれば、患者は希望を繋げる。
ほんの少しの心配りで済む話で、一言足りない。
どんな状況でも希望を与えるのがこの仕事と思っていたが、現実は違う。
あそこの病院ではコンピューターばかり眺めていて、身体一つ触らないと患者の愚痴は年々増すばかり。
我々は神様ではないので全て治せるわけではないが、希望と専門知識、寄り添う姿勢そして次に何をしたらいいかは最低限必要だと思う。