仕事柄、会社の社長は多い。
色々な話が出る中で、「顧客満足」という言葉は何度聞いたかわからない。
確かに大事なことだが、これに関して師匠から、
「顧客は満足しない。どんな商品だってもっと良いものが欲しくなる。だから安心を与えるようにしなさい。」
と指導を受けた。
この言葉の重みが年々深くなってきた。
例えば我々が腰を治療する場合、顧客満足で考えると、「いかに早く、きちんと治すか。」ということになる。
治ったら終わりである。
次に痛くなるまで我々はいらない。
しかし「安心」で考えると、次に痛くなる前にどう予防するか、痛くなった場合にはどう自分で対処するかという話になる。
不安材料に対する処方が必要になってくる。
こちらもどうやって安心を与えるかということで考えると、普段から自分で出来る体操や胃腸の管理、万が一痛くなった場合の対処法、当院への連絡方法、海外に行った場合の対処方法、薬の準備、近郊の病院の資料、腰痛治療の資料など色々とアイデアが出てくる。
満足だけで考えたら、こんな発想は出てこない。
安心で考えるから、どうやって不安を減らすかに目が行く。
この安心という発想は大事で、当院の常連さんには色々な角度から話をしている。
まるで江戸時代の寺子屋である。
長く通っている方になると、人の病気のことも気になり、「あなた、こういう場合は○○をするのよ。そのやり方では足りない。」などと指導をしている。
よく内容を聞いてみると皆、私がしゃべったことである。
門前の小僧が大分浸透してきた。
日本も医療費が膨大になり、殆ど破綻しているような状態で、「病院も痛くなったらこい」方式では限界がある。
治療を提供する側も受ける側も、安心を目標にした考えに切り替え、予防に力を入れていかないと、病院で死ぬことも救急車が来ない時代も迫ってきている。