学問として成り立っているのかは知らないが、「患者学」はあると思う。あるC型肝炎の患者が、有名な病院でのインターフェ ロン治療が功を奏して肝炎が治った。が、同時にひどい腰痛持ちだったので、肝臓の先生が同じ病院内の整形外科を紹介してくれて、腰の手術もした。手術前は2m歩くとふくらはぎが辛かったのが、かなり歩けるようになった。しかし腰の痛みは取れていない。整形の先生に聞いても、「手術は成功した。」としか言わないという。肝臓の先生にも、腰の痛みの相談を2年間ずっとしているという。痛み止めを飲んでも、胃が気持ち悪くなるだけで腰の痛みに効かないという。そんな悩みを抱えて当院におみえになった。まずこの方に「患者学」の話をした。「手術をして以前より歩けるようになったのだから、まずは整形外科の先生と紹介して下さった肝臓の先生に感謝をしなさい」と。それを言わずに辛い辛いと言っていたら、話を聞かされている医者も嫌になるだろう。この方の場合、リハビリによってかなり良くなる体なので、リハビリ科の無い病院での手術だったのが残念だが、医者の言う成功とは、「手術をして神経の圧迫が取れた。」という意味である。その結果2m歩いてもふくらはぎが辛くなくなったのだ。しかし手術で「神経の圧迫が取れた。」ことと、「腰の痛みが取れる。」ことは別問題なのだ。医者からすると、「自分はやるべき事はやった。腰の痛みが取れていなくとも、手術は問題なく成功した」という言い分である。しかし、患者側からすると、「確かに以前よりは良いが、腰の痛みが取れていないのだから、手術が成功したとは言えないだろう。」というのが本音である。筆者が病院勤務をしていた時にもこういう行き違いが多く、お互いの言い分はわかる。この場合は、リハビリ科の無い病院で手術をした為、こういう事になってしまった。こういうリハビリ難民は多い。手術をする際の病院選びは、術後のことも考えなくてはならない。だから「患者学」として、肝臓の先生にはC型肝炎を治して戴いた御礼を、整形の先生には手術が成功した御礼を、今の腰痛はリハビリの先生にお願いをすれば、自分も嫌な思いをしないですむ。なかなか学校では教えてくれないが、上手な医療の関わり方を学ぶのも自分の身を守るために必要なことである。今後もこういう「患者学」の話を書いていきたい。
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