以前、病院勤務時代に骨折の治療を真面目にやらなかった方が、その後後遺症に悩みついには仕事が出来なくなってしまった。真面目にやれば2-3ヶ月で問題なかったものを、退院後殆どリハビリにも来ず1年半してから来たときにはもうどうにもならなかった。治療にはゴールデンタイムがある。骨折なら手術やギブスが取れてから出来れば3週間以内、だめでも3ヶ月以内に治癒まで持っていく。大体何事も100日が勝負である。そのゴールデンタイムを逃すとその何倍もの時間をかけても良くならない。それぐらい大事な時間である。よく例え話に、「3歳の子にピアノを1年間教えるのと80歳の方にピアノを同じ1年間教えるのでは、同じ1年でも全く違うでしょう。」と説明している。音楽家や画家、物書きの先生などは気合いを入れてエネルギーを爆発させながら仕事をしている部分があるので、多少の身体の違和感など何とも思っていない方が多い。以前、N響(NHK交響楽団)の岩城宏之先生の話を書いたが、「病気、だからどうした。」そんな感覚である。しかしこれは時に命取りになる。芸術家としての仕事ができなくなってしまう。特に女性の場合は自宅で安静にしていると言っても、肘や肩、手の症状の場合だとトイレや食事と全く安静に出来ない。もう入院するしかない。悪い状態で無理することが将来どれだけ悪影響があるかを知らないから無理をしてしまうが、何かの形で数値化出来るといいと思う。「今肩が痛い状態で重い物を持つと、将来ゴルフを半分しか楽しめなくなってしまいます。」「今肘が痛い状態でその絵を仕上げると、無理しなければ80歳まで出来るのを75歳にしてしまいます。」そんな形で数値化出来るといいのだが、ほとんどの方は、「こんな事になるとは思わなかった。」と必ず言う。鉄は熱いうちに打てではないが、治療のゴールデンタイムは譲れない。
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