以前お世話になった先生が、患者が何を言っても「それも修行」「いい思い出」と言う。骨折しようが胃を取ろうが、がんになろうが、全て答えは同じである。当時は私自身若く、そんな返答ではどうかなぁと思っていたが、今になると名答である。患者は今起こっている自分の症状だけ言う癖があるが、この世に生を受け、長い人生の中で怪我や病気はほんの一瞬である。そう思えば「それも修行」「いい思い出」と言えるかも知れない。この言葉を言われると患者は反論できない。「修行不足ですいません。」「確かに思い出になるかも知れません。」としか言えない。何となく納得してしまうのは、修行の後に成長した自分が待っていることや辛いことがやがて思い出になることを知っているからである。何となく魔法の言葉である。日舞をやっている方にこの2つを言ったら、「そうですね。もっと頑張ります。」と言って、その後何処が今日は辛いか言わなくなってしまった。「それも修行」「いい思い出」はこの世でいい修行を積み、いい思い出に包まれたいという本能に語りかける言葉である。
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