仕事柄、減量指導はよくしている。以前中年太りで困った方に断食指導をしていたら、「3日間の断食で9食食べ損なった。今はこれをどう取り返すかで頭が一杯。」と言われて、ビックリしてしまった。こちらからするともう過ぎたことなので、取り戻すという発想がない。又旅先では必ず美味しい物を食べる習慣の方は、たまたま食べ損なっただけで、「食べられなかった○○の敵を取る。」と言う話をする。食べられなくて損をしたというよりは美味しい物を食べるのが義務みたいだ。だから穴埋めばかりに気が回る。「食い物の恨みは怖い・恐ろしい」というが、これらはすべて脳の満足である。我々は腸を基準に食生活を指導しているが、脳の満足は麻薬と同じで終わりがない。特に中高年の方で、時間とお金があると頭の中は「もっと美味しいもの、もっと美味しいもの」である。先程も80代の方と話をしていたら、「おれはちゃんと腹八分を守っている。」と言っていたが、腹八分は60代ぐらいの話で、70代は腹七分、80代は腹六分、90代は腹半分と亡くなられた聖路加の日野原院長が言っていた。そして以前テレビを見ていたらさんまさんが、「わしはいつも腹半分、食べ過ぎると面白い事が全く頭に浮かばない。」と言っていたことも思いだした。どうも減量治療を成功させるには患者さんの脳と闘わなければならないようだ。過ぎたことはどうにもならないので、将来の痩せた自分を憧れてはいかがだろうか。
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