これは以前、ある医者と雑談をしているときに聞いた話だが、「うちの名誉教授のところに難病の患者が来て、教授は一生懸命その難病の解説をしていた。そばで見ていてあれだけ丁寧に説明して下されば、さぞかし患者は良くわかっただろうと思って診察の後に聞いたら、『難しすぎて良くわからなかった。』と言ったという。でも患者はうなづいていたのでまた聞いたら、『教授の説明を私達は聞いていたのではなく、教授の顔色を見てこの先生は大丈夫かどうかを考えていたのです。説明を受けながらこの先生はとても自信がある事がわかったので、うなづいたのです。難しいことは言われてもわかりません。』と言ったという。」医者の立場からすれば、どうやって難しい病状を解説するかが大事だが、患者の感覚は違う。この先生は信頼に足りるかを顔色で見ている。手術や治療技術の事は難しい勉強をしたのだろうから、問題にはしていない。この先生にお願いして悔いはないかを考えているのである。この話には唸ってしまった。患者さんの本音を垣間見た気がした。
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