「先生大変です。すごく悪いみたい。」

常連さんが検査報告を持ってきて、「大変です。色々書いてある。何か悪いみたい。」と言う。
報告書を読んでみたら、下記のように書いてあった。尚、下記の内容に関しては本人の許可を頂いております。

【所見】
両側肺尖部に胸膜に接する不整形の陰影が見られ、線維性瘢痕と思われます。
右上葉に石灰化、縦隔リンパ節の石灰化が見られます。陳旧性(ちんきゅうせい)結核と思われます。
肝嚢胞が見られます。
頚部正中皮下に約17mmの低吸収性腫瘤が見られます。正中頚嚢胞などの嚢胞性腫瘤腫瘤が疑われます。超音波にても確認されてはいかがでしょうか。
縦隔に明かな異常は見られません。リンパ節の腫大や胸水は見られません。

総合判定:D 要精密検査

これだけ見たら何のことかわからなくても少し大変だと思うのではないでしょうか?
一つずつ解説していきます。

■両側肺尖部に胸膜に接する不整形の陰影が見られ、線維性瘢痕と思われます。
 肺尖部は肺の一番上の尖ったところで胸膜は肺を包んでいる膜、線維性というのは組織が時間の経過で繊維化した後という意味。これ自体は問題はありません。
■右上葉に石灰化、縦隔リンパ節の石灰化が見られます。陳旧性(ちんきゅうせい)結核と思われます。
 上葉は肺の上の部分、石灰化は人の身体良く石灰化を起こします、血管にも起こることで異常ではありません。陳旧性結核は「昔結核をやったでしょう」という意味。
■肝嚢胞が見られます。
 肝臓嚢胞が出来たという意味。嚢胞は殆どが良性で経過を見て問題なければそのままでいい。
■頚部正中皮下に約17mmの低吸収性腫瘤が見られます。正中頚嚢胞などの嚢胞性腫瘤腫瘤が疑われます。超音波にても確認されてはいかがでしょうか。
 首の真ん中の皮膚の下に『おでき』があります。正中頚嚢胞は胎児期に甲状腺ができる過程に関係していると言われています。大きくならなければそのままでもいいし、本人の希望があれば取ればいい。 
■縦隔に明かな異常は見られません。リンパ節の腫大や胸水は見られません。
 縦隔(じゅうかく)は左右肺と胸の前の骨、背骨に囲まれた部分で心臓、大血管、気管、食道など大切な臓器があります。リンパ節の腫大や胸水は見られないというのは、「この周辺にがんはないです。」という意味です。

結局、何の問題もなく、本来なら嬉しい報告のはずですが、医学用語の難しさで患者さんに不安を与えてしまった例です。この方には、「報告者が来たら読まずに持ってきてください。」と言いました。医学用語はその言葉の含む意味があり、とても便利な反面、上記みたいに説明してくれれば良いのですが、最後に「要精密検査」と書いてあると不安になります。私から見たら、「大きな問題はありませんが、毎年検査を続けて下さい。」と書いてあった方が親切だと思ってしまいました。

image_print印刷する