職業と身体のミスマッチ

以前暑い夏に若い女性が治療院に飛び込んできて、「すいません、30分腰をお願いします。」と言う。いかにも営業畑でバリバリの感じである。腰の治療はすぐに終わったが身体を診て、「あなた、営業が好きでしょう。楽しくてしょうがないでしよう。」と言ったら、「好きなんです、この仕事。」と言う。そのあとしばらくしてまた来て身体を診たら、なんとも元気がない。嫌な仕事を耐えている感じ。職業が変わったのかと思って聞いたら、「いえ、少し偉くなって管理職になったのです。デスクワークです。」と言う。「管理職?あなたは向かないですよ。仕事をいやいややっているでしょう。営業に戻ったら?」「そうなんです。今戻ろうか転職しようか迷っているのです。」「そう、転職も大変だから元の営業に戻れるのが一番いいね。」「本当そうです。」と言う。これは職業のミスマッチである。以前学校の副校長も、「私は生徒に教えるのが好きで先生になったが、副校長になってから書類と教育委員会との戦い。昔生徒を教えていたときが幸せだった。」という。当院には鬱病で通っていたが、「どんな学校でもいいから、生徒に触れられる環境にしたらどうですか?」と言って、学校を変えたら、鬱病が良くなった。世の中にはこの職業と身体のミスマッチの方は多い。結局自分を活かしきれない。やりたいことが仕事になればこんなに幸福なことはないといつも感じている。

image_print印刷する