患者さんに、「あなたはどうして寝るのですか?」と聞くと、「肉体の回復」という答えが多い。我々から見ると肉体の回復なら、ただ横になっているだけで十分である。これは以前NHKで見たのだが、「睡眠の理由」を特集していた。ヨーロッパのある女性が52年間寝たことがないという。夜になり、その方を撮影していたが、椅子にもたれかかっていて寝ているように見えるが、脳波を取ると寝る時に出る波が出ないので、医学的には寝ていないことになるという。その方の顔を見ると眼の下のくまが凄い。まるで鬱病患者で生気がない。その方に「あなたは寝られず、どんな感じですか?」とインタビューしたら、「とても寂しい。心が癒えない。」と言っていた。これは仮説だが、「睡眠の目的は心の癒し」ではないだろうかと言っていた。この考え方にはとても共感出来る。嫌なことがあっても寝てしまえば楽になる。ぐっすり寝られたあとは壮快で、心も軽い。たっぷり寝て、「寂しい」と言う方はいないだろう。もしこの仮説が正しいとしたら、睡眠時間は人によって違う。人は年を取り、心が太くなると睡眠がいらないのではないだろうか。若い頃は人とぶつかり、魂を痛め、よく寝る必要があるのではないだろうか。こんな単純なことだが、「人は何故、寝るのか?」はわかっていないのである。嫌なことがあったら、毛布をかぶって寝るに限る。
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