母親も年を取り、たまに田舎に帰ると会話が噛み合わない。最大の理由は耳が遠くなったことである。息子が久しぶりに帰ってきて、母親に何か言うとなれば「飯」か「風呂」である。「ばあさん、飯。」と言うと、「え?亀?」「亀じゃないよ、飯だよ。」とこんな感じである。すこし時間が経つと、「ばあさん、風呂。」と言うと、「え?うどん?」と返ってくる。「飯はさっき終わった、今度は風呂。風呂。」「え?布団?」「まだ寝ないよ。」とまるでコントである。毎年この会話をしているので、余りに予想外の言葉にこちらも怒る気持ちがなくなってしまう。本人にはそう聞こえるのだろうから仕方がないが、これは少しお笑いの方は学んだ方がいいと思う。人は誰でも年を取れば格好良く生きられない。真面目にやればやるだけおかしな事が増える。人が生きていく上で年をとるというのは極めて愉快なことだと思う。新型コロナウィルスで人との交流が減ってしまった今だからこそ、多少の聞こえにくいことも笑いに変えるぐらいの気持ちが大事だと思う。
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