常連さんからいきなり、「先生は疲れないのですか?」と言われ、「昔は大変でしたが、今は大丈夫です。」と応えた。病院勤務時代はこちらもまだ20代で若く医学知識など殆どないから、毎日来る患者から、「先生、まだ痛いんです。」と言われ続けて、月に1度程度は本当に身体が動かなくなり病院を休んでいた。そして段々自分の身体が辛くなる理由がわかったきた。それは「患者の問題に対して答えを出せないから。」だと気がついた。結局自分の能力が低く、聞かれることに答えられず、患者に辛い辛いと言われ続ければ誰でも参ってしまう。そこに気がついてから、基礎から学び始めてお陰様で40年の時間をかけ、今では殆ど答えられない問題はない。もちろん全ての患者を治せるわけではないが、その病気は○○へ行けばいいということは言える。あとはその専門の先生にまかせればいい。昔はそれすら分からなかった。だから今は仕事をしながら悩むことは全くない。現代医学で治せるのはここまで、あとはこういう治療はあるが選ぶかどうかは患者次第。極めてクールである。この仕事が天職がどうかはわからないが、ただ言えることは、「ちゃんと答えられるようになるまで諦めず続けた。」という事である。患者さんの中にはよく、「この仕事は天職ではありません。次を探します。」という人がいるが、好きな仕事でも勝てなければ嫌になってしまう。結局、目の前の仕事に勝つまでやる以外は天職とする方法はないのではないかと思ってしまう。そんな時によく若い方は転職に関して、「どれにしよう。」と迷うみたいだが、選択肢がないというのは幸福な事だと思う。私は当時、前に進む以外に全く選択肢はなかった。選択肢がある方の方が幸福な感じはするが、選びきれなかったり、途中まで行って後悔したりする。今になって、「選択肢がなくて良かった。」と言える。こんな事もこの年にならなければわからなかった事である。死んだ親父が、「我が儘なお前もその年になれば分かるから・・・。」とよく言っていたが、ようやく少し分かる年齢になってきた。
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