何人か学生が通っている。若い方達を診ていていつも感じるのは、「年を取っての挫折はきついが、若い時なら何とでもなる。何度も挫折を味わい、最終的に挫折しない人物になって欲しい」という事だ。これは以前聞いた話だが、中学・高校と優秀で東大も首席が卒業した子が、ある銀行に入って、「自分はこれだけ優秀だから3年程度で頭取になれる」と思ったらしい。いざ入行してみると簡単に夢は崩れ、これでは何年かかるかわからないと初めての挫折から失望してしまい命を絶ってしまったという。親御さんにしてみたら何ともやりきれない気持ちになるが、その子が例えば兄弟が多く家庭内で理不尽ないじめや兄弟喧嘩が絶えなければ、この程度の挫折では何とも思わなかったろう。学校でも運動部で何度も悔しい思いをしていたら、挫折は当たり前だから3年程度で頭取になれなくても、「又頑張ろう」で終わった話である。本当に若い方が挫折を知らないというのは怖い。おそらく自分の人生を全否定されてしまったような気持ちになるのであろう。私も大学受験を2度失敗してこの道に入ったが、あまり挫折感というのはなかった。正確に言うと挫折感を味わっている余裕がなかった。もうこの治療の道しかないからないのだから、必死に働いて一人前になりたいという気持ちだけで生きてきたように思う。若い方に「少年よ、大志を抱け」という言葉があるが、「少年よ、挫折で倒れない人間になれ」と言いたい。若い頃の挫折は思いがけなく将来その人の血になり肉になる事は間違いない。
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