例えば台所を少し治してもらおうと大工さんに、「ここに棚をつけて」と言ったら大工さんが、「そこにつけるのはバランスが悪い。こっちにつけた方が格好が良いし、いい仕事が出来そうだ。」と言ったら何と言うだろうか?「いやいやここに棚が欲しい。」と言うのではないだろうか。我々の仕事で言えば膝痛で来た方が、「膝は痛いかもしれないが腰を調整したい。貴方の腰はやりがいがあるから・・・」と言って、腰ばかりいじり、膝をいじらず良くならなかったらおそらく苦情が来ると思う。ラーメンを食べたかった方が中華に行って、「今日はイカセロリが最高に美味しい。それを出しますから・・・」と言われたら、「ラーメン食べたかった・・・」となると思う。仕事の本質は、「全て施主様の言う通り」と叔父から教わった。しかしそれを提供する側が親切で、「あっちの棚」というのは大きなお世話でお節介である。但し、施主が何処につけたらいいか大工に相談したら話は変わる。相談されて話をして変わることしあるかもしれないが、仕事をする人は例え親切であっても、施主の考えを勝手に変えてはならないと思っている。親切の押し売りになってしまう。当院でも常連さんの中に自分が治って人が聞いてもいないのに、「あなた腰痛いのじゃない。私、良い所を知っている。」と言う人がいるが、聞かれて答えるのはいいが、聞かれてもいないのにそれはお節介である。以前青山の奥様から、「私の膝はもう長患いなのだからそんなに急いで治さなくてもいい。いくらでも通うからゆっくりやって頂戴」と言われて、こちらにしてみると「早く綺麗に治す」事を心掛けているのに、こちらのポリシィに反するとは思いながらも施主様の言う通りのんびり治した。1ヶ月で治るものを確か3-4ヶ月かけた。内心、「あそこでこの膝治るのに3-4ヶ月かかった」と言われると少ししゃくに障るが、この時も「全て施主様の言う通り」と思っていた。ここを親切やお節介でやってしまうと必ず、「私はあなたのことを思ってこうやっているのに、どうしてやらないの?」と言う。「砂漠でラクダをオアシスまでは連れてこられるが、その水を飲むか飲まないかはラクダ次第。」と以前に書いたが、色々とやってしまうのはラクダの頭を持って無理矢理オアシスに顔を突っ込むような話である。常に飲む飲まないはラクダ次第である。我々の仕事はあくまでオアシスに連れてくるまでで、顔を突っ込むことではない。親切心から出ているからすこし難しい場面はあるが、「○○をやるとこうなる」という事を全て教えて、後は本人の行動を待つしかない。
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