先日、ご紹介で来た方は右利きなのに左手を酷使している。普通はこういう事は起こらないので話をきいたら、iPad等の操作は、左手の方がはるかに楽にできるという。これは、本来左利きなのを、子供の頃に治されたのではないかと思い、「親に聞いてみなさい。治されたと思う。」と伝えた。親御さんに聞いたところ、「初めから右利きだった。」と言う。これはどういう風に考えれば良いかというと、左手が自由に使えるということは右脳、つまり芸術関係に能力がある可能性が高い。「子供の頃から父も私も音楽が大好きで、音大に行こうと思ったぐらい。」と言う。しかし就職の段階でIT企業を選んでしまったという。右脳が発達している人は、左脳のロジックを嫌う。ITの会社でどんな仕事をしているのか聞いたら、比較的芸術関係のデザインなどをやっているという。これを聞いて一安心した。長年人の身体を診ていると身体と職業がミスマッチの方は多い。私などは典型的な左脳人間で理屈が通らないと嫌である。病気の原因を追及していくことが楽しい。しかし身体の特性を活かせない方は、5時で勤務が終わったらもう仕事のことは考えたくないというだろう。休みの日など仕事から離れたいと言うだろう。しかし身体と職業が合っている人は、休みの日でも24時間常に考えている。芸術家や研究者など皆それである。この身体の特性は持って生まれたものである。人としゃべるのが得意な人、部屋にこもって研究をするのが向いている人、人それぞれであるが、ミスマッチほど不幸なことはない。結局どんな身体を持って生まれたかで職業は決まってしまう。その延長線上で、運命にまで影響がある。この方には、「あなたが、大学を選ぶときに、お父さんは、『音大へ行ったら』と言ったらしいが、今になってはその判断は正しかったと思う。よく説明をしてお父さんに少し詫びを入れたら。」と言ったら、「そうですね。その時は大きな会社に就職という頭しかなかったですが、今になると父の判断もありだと思います。父に話してみます。」と言った。この「身体で決まる職業」という発想はあまりないだろうが、人が幸福に生きていく上でとても大事なポイントである。
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