よく患者さんが、「スクワットをして腰が痛くなった」「ジムで肩を痛めた」「ジョギングで膝を痛めた」と言って来るが、色々な体操がある中で1番お薦めしているのが、ラジオ体操である。これは実に身体の各関節に負担をかける事なく、筋肉ももれなくくまなく動かせる素晴らしい体操である。あの音楽が流れると自然に身体が動いたり、子供の頃、早起きをして胸からぶら下げたカードにスタンプを押してもらえるのが嬉しかった記憶がある。どういう経緯があったのか少し調べてみた。
このラジオ体操は戦前からあるが、今の形になったのは茨城県出身の遠山喜一郎さんで、ベルリンオリンピックにも日本体操選手代表として出場している。後に、日本体操協会副会長を務められた。
戦後になって改定されたラジオ体操は「一度動き出したら、音楽に乗って最後までやりきれるものでなくてはならない」と遠山さんの理論に基づいている。遠山さんは戦時中に土浦海軍航空隊予科練で体育教師を務め、その時すでにリズム体操を訓練に取り入れていた。それをもとに1人で作り上げたのだ。
戦後になり、NHKラジオから流れてくる音楽に合わせて数百万人が、同じ動作をするのはアメリカ人にはまったく理解できず、むしろ恐怖を覚えるものだったようだ。
当然禁止されたが体操関係者らが、「ラジオ体操は気分をさわやかにするもので、争いをなくすには効果的だ」と説得する。実際に連合軍の将校たちの前で体操を見せるなどの努力の結果、ラジオ体操は再開された。
現在では「ラジオ体操の素晴らしさは、富士山の美しさと同じ」と言われるほどになっている。
さらに、体操の指導者育成も行われ、講習会修了者には「指導者章」が授与された。
遠山喜一郎さんは、生前、こんな言葉を残している。「富士山は裾野が広いから美しい。ラジオ体操も同じだ。国民全体がやって、はじめて素晴らしいものになるんだ」。