時々若い方が、「今の仕事が合いません」と言うが、本来合う仕事なんかないと思う。どんな仕事でもうまくいけば楽しいし、好きな仕事でもうまくいかなければ嫌になってしまう。師匠から、「合うまで続ければいい。自分を仕事に合わせるのである。」と教えて戴いたが本当にそう思う。そんな時に選択肢が多いと迷うが、選択肢がなければ迷いようがない。私自身田舎にいて、将来何になるか余り考えていなかったが、受験校だったので自然に「数学の学者」か「コンピュータの研究者」程度しか頭に思い浮かばなかった。その後大学受験に失敗して、東京での浪人中に鍼灸に出会い、「大学に受かったら研究職、受からなかったら鍼灸」と腹を決めた。浪人後大学に落ちたので、腹が決まった。当時としたら、「選択肢が全くなかった」という状況である。そんな時、何でも選べるとしたら間違いなく悩んでいた。元に戻れないし、選択肢がなかったからその道に進む以外生きる方法がなかった。今から思うとそれが良かったと思う。選択に悩んでいたら、何年も悩んだかもしれない。そしてある程度やったところで、うまくいかなかったら、「違う道の方が良かったかもしれない」と必ず思ったと思う。しかし選択肢がなければ、そういうことに悩まずに済む。よく歌手の人が、「私には歌しかないから・・・」と言っているが、あの感覚は大事だと思う。今は物でも何で多すぎて、選べない人が沢山いる。選択肢が多いのは豊かで結構な話だが、選ぶことで悩むのは恵まれたる不幸である。特に人生において、「あの道もあったかもしれない。違う人とご縁があったら違う人生だったかもしれない。あの時に違う判断をしていたら、人生が変わっていたかもしれない。」と悩むのは人の常だが、全て選択肢が多いことに起因する。人が生きていく上でそんなに多くの選択は出来ないから、どんな時も「この人生で良かった」と思い続ける方が幸せである。
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