病院勤務時代に膝痛の患者が続き、治せなくて困った時があった。こちらが、「膝は治せないからやだなぁ」と思うと、次の患者が膝痛。「またかぁ」と思いながらやはり治せない。膝の患者ばかり気にしているから、(実際は全患者の数%ぐらいしか膝痛はいない)こちらが意識すればするほど、膝痛の患者ばかりに目につく。「何で膝痛ばかり来る・・・」という気持ちになってしまう。治せる患者はいくら来ても何とも思わないから、心に引っかからない。そんなある日、交通事故で2ヶ月も膝痛が治らない患者が外科から回ってきた。医者の方では、「レントゲン的には問題はないんだけど・・・」と打つ手がない感じが伝わる。「また膝か・・・」と思いながら、どうせ治せないだろうからとあきらめの気持ちで、ゆっくりたっぷり膝を診ていたら、もの凄く膝に熱を持っている。「炎症じゃない。冷やしたの?」と聞いたら、「医者からもらった湿布はちゃんと貼っています」と言う。しかし凄い熱。「ここまで熱があったら冷湿布だけでは足らない。氷で24時間連続で冷やしなさい。」と指導をして帰した。なんと翌日、「あれだけ治らなかった膝が痛くありません。」と言われ、膝を触ったら反対側とほぼ同じ温度。その時に始めて、「膝に熱があるとこんなに治らないものなのか」と知った。それ以来膝の患者を診るのが楽しくなり、痛みが長引く原因の一つに、「膝の熱」があることを学んだ。これがわかると膝痛が来ないかなぁと思ってしまう。変われば変わるものである。始めは苦手と思っていたことでも何かのきっかけで人は変われる。この体験を通して、始めは苦手でも少しずつ関わっていけば、何かのきっかけで克服出来るのではないかと思うようになった。無理矢理乗り越えようとせず、「どうせわからないからゆっくり関わりながら、何かチャンスがあれば良いなぁ」ぐらいの気持ちがいいと思う。目をつり上げて過緊張していたら、取り組むことが嫌になってしまう。「治せなくてもいいや、でも治せたらもっといい」ぐらいの気持ちが大事だと思う。
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