常連さんの甥っ子が鍼灸師で頑張っているという。何かアドバイスを叔母としてあげたいので、「治療の仕事の本質は何ですか?」と聞いてきた。昔なら、「治療技術が全て。確実に治すこと」と言っていたろうが、最近は全く違う考え方を持っている。一番大切なことは「患者さんが次にまた来ること」と断言できる。食べ物屋さんでも味の良い順に流行るわけではない。歌手だって歌の上手い順に売れるわけではない。我々も同じで治療レベルの高い順に流行るわけではない。プロなのだからあまり治療技術が低いのは論外だが、ある程度極めていくと96点、97点、98点と殆ど差はない。そして次にまた来て頂けるために、治療技術だけでなく、治療院の雰囲気や清潔感、話しやすさ、話の受け答えなど、総合力を患者は判断している。医者の世界なら、「あの先生は大嫌いだけど、腕は良いから仕方なくあの先生に切ってもらう。手術の後は行かない。」という心理になるだろう。居酒屋さんでも同じで狭くてあまり美味しくなくても行ってしまう店がある。以前病院研修の後にいつも行く喫茶店があり、行く度に毎回、「ここは汚い店よね。ケーキセットで500円なんて安すぎる。潰れるかも。」と言いながら毎月通った。逆に他の喫茶店には行かなかった。人にはそういう真理がある。敢えて偉そうなことを言えば、この仕事の本質の一つに、「患者と共に歩む」がある。「あの時は大変だったねぇ。お母さん亡くなってもう5年位経つ?この間飼い始めた犬がもう8年目。」とその患者と同じ時間、空間、人生を伴走する感じである。結局この仕事は慰安と娯楽だと思う。その部分がとても大事で、その上に高い技術、人柄などの総合力がこの仕事の本質だと思う。昔勉強していた頃は、「慰安などではない。立派な医学だ。」と思っていたが、考えてみれば病院も苦痛を取って楽になり、安心感が買えるのだから、多いに慰安の要素はある。色々と考えてようやくこんな結論が見えてきた。
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