武器を持っていないことが最大の武器

昨年、脊柱管狭窄症を患ってから理学療法士の先生にお世話になり、少し分野は違うが関節に関してあまりに詳しいので、少し勉強してみた。以前大学の解剖教室でお世話になり、それなりに学んだつもりでいたが、理学療法士の先生方の研究発表が、あまりに解剖学者みたいな事を言うので驚き、どうしてそこまで詳しいのか疑問に思っていたが、昨日のセミナーを聞きながら理由がわかった。昨日のセミナーは麻酔科の先生が理学療法士の先生に講義を依頼する形で行われ、理学療法士の先生がしゃべる関節の詳細な話に、麻酔科の先生がついていけず、「俺なら開けるか注射しちゃう」と言っていたが、そりゃそうだろうなぁと思った。我々も鍼灸という武器があるので、「痛みが取れなければ鍼か灸で鎮めちゃう」と思っている。しかし理学療法士の先生は手以外武器を持っていない。手で行う治療を徒手療法と言うが、手以外何も使えないので、関節の中の事をトコトン調べなければ戦えない。これに気づいたときは、「しまった」と思った。医者なら最終手段で手術があるから、理学療法士のように詳しく勉強しなくても事足りてしまうのである。これは落とし穴だと思った。我々の感覚の中にも、「最後は鍼か灸をすれば・・・。ダメなら医者に送る。」と思っている事が、学ばない原因である。こう考えると「武器を持っていないことが最大の武器」と言える。こういう事を考えていたら、インドのガンジーを思い出した。「非暴力・不服従」を武器にイギリスに勝った。勉強する上で、「いざとなったら○○がある」は大事な事だが、時に学ぶチャンスを失う危険性があることを知って欲しい。

image_print印刷する