常連さんの新米妻が、「主人が犬を飼っていて私が散歩係」と言う。「ではいい犬の躾け方を教えて上げる」と言って、私の師匠から聞いた話をした。師匠が家に戻って飼い犬に土産をあげようとするときに、犬が奥さんを見て、「食べていい?」と言う顔をするという。奥さんの許可があると、犬はすぐに食べるのだが、許可がないと食べたいのに我慢しているという。その時の奥さんの顔が何とも勝ち誇っているという。その時師匠は、「負けた」と思うらしい。この話をして、「あなたもご主人が飼っている犬の面倒を見て、毎回言い聞かせなさい。『何か食べるときは私の許可がいるのよ。わかった?』と。そうすれば犬は人の話を理解するから、やがてあなたをご主人と思うはず。そして何ヶ月したら、ご主人の土産に対してあなたを見たら勝ち。」と伝えたら笑っていた。我が家の猫も冬寒いと、必ず家内の布団の上に乗る。私の布団の上には乗らない。そんな時に、「負けた」と思うが、家内からすれば、「普段どけだけ面倒を見ていると思っているの」と言いたいだろう。動物は正直だから、自分に益のある人をちゃんと覚えている。猫は少し薄情なところがあるが、犬は人の心を実に見事に満たしてくれると聞く。よく「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」と申しますけれども,喧嘩の種は割とよく拾って食べてくれるような気がいたします。と皇后様もおっしゃっていた。
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