耳鳴りの考え方

最近は耳鳴りの方が多く、その治療をどう考えているか少しお話します。耳鳴りに関しては以前にも書いたとおり、「死ぬまでに何とか仇を取りたい」と思っています。
これはどういうことかというと、本音を言えば治せないのです。
耳鳴りも昔中耳炎をやったとか、糖尿病や脳神経に異常があればそちらの治療で改善するかもしれないが、現実問題、耳鳴りの原因を特定することは極めて難しいのが現実です。音が何処で鳴っているかもわかりませんし、場合によっては頭鳴りと言って頭のある部位が音源という報告もある。血液や画像をいくら調べても何も出ないし、原因が特定できないので手が打てないのです。
所属している耳鼻科の学会で先生に相談すると、「上手につき合え」「諦めさせなさい」「気にしないようにいいなさい」と素っ気ない返事ばかりで、中々積極的な治療の話にはなりません。よその学会で耳鳴りの治療成績がいい先生の発表を聞くとすぐに飛んでいって、「先生、冬虫夏草はそんなに良いのですか?」と聞くと、「それはたまたま。裏では治せない人ばかり。うまくいった方のみ発表している。中々一筋縄ではいかず、私自身、苦労している。」という返事。
これじゃ原因も分からないし、治療成績も悪いから諦めなくてはならないかというと実はそうでもない。
患者さんの話にはいくつかの特徴がある。少し列挙してみたい。

  1. 発症当時は大騒ぎしてあの薬、あの耳鼻科と走り回る
  2. 1ヶ月もすると以前ほどは騒がなくなる。「良くなったの?」と聞くと、「全く治っていません。少しだけなっている時間は短くなったかも知れません。」と言う。
  3. 3ヶ月もすると患者の口から耳鳴りという言葉が出てきません。こっちは大分良くなったと思って聞くと、「相変わらず鳴っています。毎回騒ぐのも格好が悪いので・・・」
  4. 仕事中や友だちとしゃべっている時には全く気にならない。夜一人で静かになるとなり始める。

こんな特徴があるので、患者が普段の生活で、「何をすれば良くなり、何をすれば悪化するのか」を掴み、耳鳴りが悪化する習慣を減らしていくことである。耳鳴りに自分から近づくのではなく、遠ざかる必要がある。よく患者の中に、「○○をやったら耳鳴りが悪化して、そのあと耐えた」と時々聞くが、人の身体は癖のものである。耳鳴りから遠ざかることをすれば、自然に軽くなる。
現段階で原因と治療法が不明なので、こんな対応法しかない。しかし多くの患者を見ていて、もう10年以上、全く変わらない耳鳴りが続いているという患者は殆どいない。
そんな事を考えると、耳鼻科の先生の「気にしないで慣れなさい」は治らないから諦めていっている言葉ではなく、適切なアドバイスで名言である。

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