治療法はあっても痛みが取れない

ある常連さんが肩を痛がっている。肩の専門病院を紹介したが、超音波で診てそんなに大きな問題はないだろうと言われ、注射を打ってもらったが全く効かなかったと言う。
患者の話を詳しく聞くと、これはもしかしたら肩関節の中の情報がないとダメかもしれないと、MRIを撮りなさいと伝え調べたら、「関節唇損傷」だった。
場合によっては手術が必要な事もあるという話になった。
関節唇は聞き慣れないだろうが、関節のまわりに唇のようにくっついている軟骨で、関節の安定にはかかせない組織の事を言う。
これは自然治癒しないので、痛みが強ければ入院して内視鏡で損傷部位を削って整えたり、押さえつけたりの処置が必要だ。
本人はそんな大変なことになるとは思っていなかったので、初めに診て頂いた専門の先生の注射は効かないし何だったのかと思う訳です。
確かに見立は甘かったとはおもいますが、間違ってはいない。
痛みの部位(関節包の中)に対してちゃんと注射も打ってもらったし、結果効かなかったことは残念だが、間違った治療ではない。
何処の学会でこの内容で発表しても何の問題もない。
しかし難を言えば、やはり関節の中は診るべきだった。
大まかな治療法はあっているのですが、鎮痛までいかなかったのだ。
患者にしてみれば、効くか効かないかはとても大きな問題だ。
正しい医療であっても結果とはギャップがある。
治療効果というのは恐ろしいぐらいドンピタでないと結果が出ない。
我々の感覚で数ミリ違うなんてとんでもない、角度にしても1度狂うなんてとんでもないことという感覚がある。
治療がそこそこあっているから効くのではないのだ。
恐ろしいぐらいの的確性がないと効果は出ない。
以前師匠に、「治療に必要な事はなんですか?」と聞いたら、「的確性、それ以外にない」と教えて戴いたが、治療があっていても効かない現実がある事を知っていて欲しいと思う。

image_print印刷する