これは人生の師匠から大分昔に教わった言葉です。よく「この仕事は自分に合っていない」という声を若い方から聞きます。合っていないから探す、そしてどんどん時間が経ってしまい、60才ぐらいになっても、「まだ自分に合った仕事が見つかっていない」と言う。もしこれを結婚で考えたらどうでしょうか。「色々な人とつき合ったけど自分に合った人と巡り会えない。4回結婚して4回離婚、又探し求めている」それでもいいのかも知れませんが、昔の結婚は親同士が決めて、「この人が今日からあなたの旦那さん」と言って結婚した方達の離婚率は極端に低い。時代背景もありますが、特に女性が男性に合わせたのではないでしょうか。自分に合っているかではなく、兎に角相手に合わせたので、うまくいったのです。結局仕事でも結婚でも相手に合わせるのです。私もこの仕事を始めて、40数年経ちますが、始めの頃病院勤務で、治せない患者から毎日、「まだ痛い。全然良くならない」と言われ続けて月に一度位は病院に行けないのです。朝起きられない。身体が動かないのです。しかしここ15年位はようやく仕事を越えられるようになり、難しい患者をどうすればいいかが分かってきました。そうなると楽しくて仕方がない。「もっと難しい患者来ないかなぁ」と思ってしまう。休みの日もぎっくり腰で急患でも来ないかぁと思ってしまう。もう仕事が趣味というか道楽なのです。これはこの仕事が合っていたからではありません。人生の師匠から教わったので、合うまで続けた結果です。若い方は中々そういう気持ちになれないかもしれませんが、幸運なことに、「自分に合う仕事などない」と若い時期に教わりましたから、ある意味辛抱ができたと思います。そういう意味では「教え」は心の栄養というか生きる軌範(きはん 判断の基準)です。その一言を知っているだけで、物事の判断が変わってしまうのです。知らない者同士がしゃべれば、「本当に合う仕事なんでないよね」で愚痴を言って終わりです。人は食べ物だけで生きている訳ではなく、そういう先代の知恵や教えを心の栄養にしないと進むべき方向を間違ってしまうのです。昔は大家族でお爺ちゃんやお婆ちゃんから教わりました。何となく年寄りの言葉が耳に残っていたのです。核家族になり、両親が仕事で追われていると子供は学ぶ機会に中々恵まれませんが、自分から学び取ろうとすると今ほどいい時代はありません。是非物事の軌範を求めて、人生の最後に後悔するような遠回りをしないで頂きたいと思います。
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