忙しい時の方が色々と出来る

もう20年以上通われている会長が最近85才を超え、つくづく最近の気持ちを教えてくれた。
「昔は歌舞伎やクラッシックなど時間がなくて見られないから、会員になって自動的にチケットを送ってもらっていた。もちろん全て見れる訳ではないが、それでもそこそこは頑張って見ていた。やがていつでも自由に見られるようになりたいなぁと思いながら・・・。しかし最近いくらでも時間があるのに、全く見に行かない。気力がないというか何と言うか。ゴルフもコロナで4年休んだら、すっかり下手になってしまい、面白くなくなった。飲み会のお誘いなども殆どない。本は買うには買うのだが、一切開けない。積んでおくだけ。忙しい頃に描いていた老後とは全く違う。結局、自宅でエアコンにあたりながら、冷えて腰が痛くなっただけ。」
この話には唸ってしまった。
こういう年配の方の話は、飾りがなくいつも正直である。私もあと20年でその年齢になるが、今忙しくさせて頂いていることがやがては、「あの時の方が色々と出来た」と言うのだろなぁと感じる。
仕事柄、難病の人、運命にのめされた方、希望を失った方達の話をよく聞くが、いつもそういう教えていただいた事の蓄積が、自分の人生を先回りしていてくれて、「○○の場合は△△と感じるだろうから、□□という気持ちにはならないようにしておこう。」と、手が打てる。
これはこの仕事の特権であろう。
1時間という長い時間、患者の話を聞きながら、知らぬ間に人生の落とし穴を少しよけて通れる感じがしている。
最近は若い患者には少し説教っぽくなっているが、こういう話が出来るのも、あらゆる角度から、ものを見る目を養って頂いたと思う。
「忙しい時の方が色々と出来る」と教えて戴いた事を胸に、もう少し踏ん張ってみようと思う。

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