患者さんの中にはお年寄りも多い。そういう方達から出る話はやはり昔話ばかりである。「昔は台所に棚をつけたいと思い、大工さんに言うとすぐに取り付けてくれて、見積もりなどなかった。金額もこちらが思っていた額とそんなに変わらないから、安心して何でも頼めた。畳屋さんも年末の大掃除にはきてくれて、まだ取り替えなくても大丈夫とか、来年は張り替えた方がいいと言って、勝手にやってくれた。酒屋さんも勝手に入ってきて、冷蔵庫にビールを入れてくれ、空き瓶の回収から、補充までちゃんとやってくれた。魚屋さんもこちらにいいように何時もさばいてくれて便利だった。銀行もお金を取りに来てくれて、支払から管理をやってくれた。医者もかかりつけの先生がいて、何でも診てくれた。その先生が、大きな病院へ行けといわなければ、何でもそこで治った。何か困れば、誰かに言えば何とかなった。とても便利で生活しやすかった。しかし最近はどこかを直すのも、見積もりを取らないといくらといわれるかわからないので怖い。銀行も来てくれないし、医者も科ごとに行く病院が違うから大変。予約もネットなどと言われるとお手上げ。孫にやってもらうしかない。昔の比べて住みにくい世の中になった。」と言う。確かに便利になった部分は沢山あるが、昔ながらの御用聞きがいない事が問題であろう。こういう話を聞く度に、我々の仕事が役にたつと思ってしまう。まず具合が悪ければ、あそこで聞く。身体の御用聞きは我々の仕事の一部である。そこに人は安心を感じる。
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