最終診断

仕事柄、色々な病気を持った人を専門病院に送っている。耳鼻科なら神尾記念病院、甲状腺なら伊藤病院、目なら井上眼科病院、肝臓なら虎ノ門病院、がんならがん研有明病院、婦人科なら愛育病院、と大体定番がある。では何故定番かというと、数ある病院の中でも、「あそこが何と言った」が最終診断になってしまう。がんなら「がん研が何と言ってる?」甲状腺なら、「伊藤先生は何と言ってる?」でほぼ決まってしまう。勿論人間のやることだから100%というのはないが、やはり名の通った病院の判断は重みがある。我が家でもある体験をしたので少しお話しをしたい。家内が昔から耳が弱く、すこし山に登ったり飛行機に乗るとよく中耳炎を起こしていた。「耳が弱いんだからしようがない。薬を飲んで早く治せば・・・」ぐらいのアドバイスしか出来なかった。しかしある時、神尾先生のところに行くチャンスがあり診て頂いた。早速問診とCT、MRIと徹底している。中々耳鼻科で入院施設のある所は少ないが、ここには入院施設があり日に全国から数百人の患者がくるというから凄い。検査の結果画像を見た先生がまず一言、「あなたは耳によく炎症を起こすでしょう。耳の前にスキマがあるのですが、あなたの場合は普通の人の1/3しかスキマがありません。これは先天性のもので治療法はありません。」と今までどれだけ耳鼻科に行っても聞いたことのない診断結果だった。これには感動した。そして同時に、「これが最終診断だ」と確信した。普通の耳鼻科なら、「耳に炎症があります。薬を出しておきます。」で終わり、何故炎症が起こったのか、今後どうすれば良いのかが全く教えて頂けない。「痛くなったらまた来てください。」で終わり。しかし神尾先生の一言で、「なんだ、先天的な構造の問題か。だったら耳に負担をかけるわけにはいかない。」で何故、炎症が起こり、今後どうしたらいいのかまで全てわかる。本来医療はこうでなければならないが、中々こういう診断を戴ける病院は少ない。逆にこういう診断が出せるから、名門というか定番医者なのである。この経験をしてから、少しでもこういう話が出来るように意識はしてきたが、まだまだ道半ばでゴールは遠そうである。

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