最後はお灸で決める

鍼灸学校に入るまでは、「やがては鍼の名人になろう」と思っていて、灸のことなど全然頭になかった。実際学校の授業でも、灸は「もぐさ捻り」ばかりで全く面白くない。国家試験を取った後も、鍼でどうやって痛みを取るかばかり考えていたから、灸に関しては患者さんから言われればやっているだけで、こちらからは余りお薦めしなかった。そんなある日、病院勤務時代に坐骨神経痛の酷いヤクザの親分が来て、「医者に注射を打ってもらっても全然効かない。先生の鍼もいいんだけど、やっぱり痛みは取れない。こうなると浅草に行って、灸で焼いてもらいしかない。」と言っていて、数日してまた病院に来たとき、「親分、腰は?」「やってもらってから全然痛くない。やはり坐骨神経痛は灸に限る。だけど本当に熱いから、粘れるだけ粘って駄目なら弘法の灸だなぁ。」と言っていた。その事がきっかけになり、坐骨神経痛の患者に灸を使い出したら、面白いように痛みが取れる。「こんなに効果があるのか」と改めて驚いた。また、数年前に私自身が五十肩で夜中にズキンズキン痛み出し、翌朝スタッフに灸を少し多めにやってもらった時も、その直後から痛みはなくなっていた。数年前に脊柱管狭窄症も患い、足のシビレが気になった時も、灸で治まった。昔お世話になった先生が、「鍼は流派はがあり難しいけど、灸にはない。まずはお灸の先生に習うとしっかり治療する基礎が身につく。」と教えて戴いたが、全くその通りである。「最後はお灸で決める」は我々の合い言葉である。

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