昨日来た患者は2年ほど前に心筋梗塞をやり、その後精神的にもやられてしまい、薬を飲んでも治らず、最近は腰まで痛くなったのでペインクリニックで注射を打っているがあまり効かないという。
薬を見たら15種類ぐらい出ていてさすがに本人も、「なんか多いいんじゃないかなぁ」と感じていたという。
心筋梗塞の前は高脂血症や尿酸の治療を内科でしていたが、心臓のステントを入れる話になり、循環器からも薬が出ている。これは同じ病院で同じカルテなので投薬などは問題がないが、その後心療内科は近医に通っているという。
「心療内科の先生は心臓のことを知っているのですか?」「いえ、知りません。」
「高脂血症や尿酸の治療の事は?」「知りません。」
「ペインの先生は心筋梗塞と心療内科のことは知っていますか?」「知りません。」
これには少し困ってしまった。投薬が多すぎれば心療内科の薬の効きが悪かったり、ペインでもいい結果が出にくくなっている事が簡単に想像出来る。
「どうして言わないのですか?」「お薬手帳はだしてあるので・・・。医者だからわかっているのでは・・・」
基本的に医療連携はないと思った方がいい。だからかかっている先生に全部事情を説明しなければならない。まだ同じ病院でカルテを回していればまだいいが、医者だから全てわかっているということはない。この患者さん、心療内科の先生に心臓の薬を見せたら、減薬か変更する可能性が高い。いつもこういう患者にはトータルで全身を診て調整してくれる医者がいたらと感じてしまう。最近は今までの縦割りの医療の反省から、総合診療科が出来ている。
しかしまだまだ病気を診るだけで、一人の人の全体を考える医療にはもう少し時間がかかりそうである。