筋肉君の気持ち

以前から何度か「筋肉君の気持ち」は書いている。
長年仕事をしていると本人の口から出る言葉より、我々が筋肉を触って感じることの方がはるかに正確である。
そんな体験をしていると段々と患者の言葉を聞かなくなる。
こちらと筋肉君の間だけで仕事が成り立ってしまう。
悪い所を触ると、「こんなに僕は硬くなって、どんだけ負担を強いられたかわかるでしょう」と筋肉君が言っていて、「そうだよね、わかるわかる。少し治療するから反応してね。」と言い聞かせながら治療をしている。
中には何も言わず全く反応しない筋肉もある。
「誰が反応するものか・・・」と言った感じである。
少し治療して筋肉君の気持ちが変わり、「わかった。少しほぐれてやるよ。」となれば患者は楽になる。
筋肉君も人の性格みたいに素直な時もあれば、頑固な時もある。
「人を見て法を説け」ではないが、「筋肉を触って治療法を変えろ」と言いたくなってしまう。
しかし実際問題として治療が難しいのは、時々筋肉君が性格を変えることである。
今までこの方はこんな治療法で良かったのに、突然心変わりのように筋肉君が反応しなくなるときがある。
理由はわからないが、こちらが何か鍵穴のようなものを見つけられれば、いいが毎回そうは簡単にいかない。
その辺がこの治療の面白さであり、難しさである。
人間だって相手の気持ちがわかれば何でもうまくいく。
わからないから解決したときに大きな喜びがあるのである。
当分、この戦いは続きそうである。

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