ある程度の年齢になってくると痛いところが1つということは少ない。
腰や膝、首も痛いし、眠れないし、便秘もある。
以前にいくら治療時間を取ってもいいから、痛い所を全部まとめて治してくれと頼まれたが、結果は良くなかった。
当時理由はよくわからなかったが、今になればなんと愚かなことをしたのか感じる。
身体は5ヶ所痛いところがあっても、1番ひどい所しか感じない。
他の悪い所を感じない仕組みが身体にはある。
これは有り難いことなのだが、1番ひどい所を治すと2番目に辛い所を感じる。
2番目を治療すれば今度は3番目と、まるで痛みが身体中を駆け巡るように感じる。
きちんと説明しないと患者さんから、「今度はこっちが痛くなってきた。」と言われる。
では、「前回の所はどうですか?」と聞くと、「あそこはもういいの。今度はここ。」となる。
悪いものが出きってしまえば治療は終わりだが、やはり時間はかかる。
悪くなるのにかかった時間だけ治療にも時間はかかるものである。
では悪くなるのに30年かかって年齢が70才の方は、死ぬまで治らないのかというとそこは我々の腕の見せ所である。
早く治す方法は沢山ある。
それはまとめて治療するのではなく、その時に1番辛い所だけ治療することである。
順番にやる理由の1つに、治療というのは悪くなった逆をやるわけだ。
悪くなったのも同時ではなく、徐々に悪化したわけだ。
だから治療もその悪化した順番を考慮しながら、絡んだ糸をほどくつもりでやるとうまくいく。
まとめて5ヶ所全部治療するより、1回に1ヶ所で5回治療した方がいい。
そして治療していくと昔の痛みを思い出すから不思議だ。
そういえばあの時、こんな痛みを感じていた。
いかに人生の歩みと症状が連動しているかがわかる。
あっちこっち痛くなったのも人の歴史。
それを紐解きながら、昔を思い出しながら治療するのも趣がある。
治療も人生も振り返るところに価値があると思っている。