常連さんが、ベッドから落ちて肩の前を打撲したという。この程度では骨は大丈夫だろうから、ロキソニンの湿布だけして様子を見ていたら、ぶつけた肩の前ではなく後に痛みが出てきたという。理由がわからないので悩んだが、そこにもロキソニン湿布を貼ったら楽になったという。これには理由があって、ぶつけた肩の筋肉は三角筋、ぶつけたところが痛いのは当然だが、その三角筋を支配している神経は腋窩(えきか)神経と言って肩の後ろから出てくる。打撲によって神経が興奮した形になる。こうなると我々は首を疑う。腋窩神経は前首の横から出ているので、そこを触ったら痛がる。当然首全体も硬い。今は肩の後だけ痛むが肩が落ちつけば今度は首が辛いと言うだろう。この首から神経が出ているところに胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)がある。首から出ている神経に何かあればここが硬くなる。この胸鎖乳突筋は耳についているので、首の神経に異変が起こると、耳の症状が起こりやすくなる。この患者はまだ大丈夫だったが、「肩の前をぶつけると回り回って耳がおかしくなる」のである。この話は解剖の知識がないと理解出来ないが、我々から見たら身体は正しい反応をしているので、ここは悩むところではない。よくぞ正しく反応してくれたと言いたい。何か事件があって、気になる症状が出たらご相談して戴きたい。理由がわからず悩むのと、正しい反応をしてくれていたのかでは全く心の安定が違う。
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