沸騰温度について

これは以前師匠から教えていただいたことだが
「水は沸騰するまで何度だかわからない。60℃でも95℃でも状態は同じ。しかし100℃を超えた途端状況は変わる。」
これは物事の例えだが、ある線を越えた途端別世界になると言うことである。
越えなければ60%でも95%でも越えないという意味では同じ。
治療も同じ事が言えて、今までの治療で良い所まで来ているからもう少し頑張れば問題なくなるのに、途中で止めてしまう方が意外に多い。
あともう少しが踏ん張れない。
人間はゴールが見えたり、今の状況が何点か分かると頑張れるのだが見えないと頑張れない。
端から見ているともう少しなのに、沸騰出来ない状況がとても多い。
もったいないことだが、95%まで踏ん張れたのにあと少しが頑張れない。
自分が限界までやって希望がなくなってしまうのであろう。
95%の方と100%で沸騰した方の違いはわずか5%で殆ど差がない。
しかしスイッチが入った方と入らなかった方に分かれてしまう。
この仕事をして患者さんの身体を診ながら、
「あなたの器に今80%入っています。ほんの少しの無理をするだけで壊れますよ。少し治療して余力を持たせてからその仕事をしたらどうですか?」
とアドバイスするが、患者さんからは
「そんな状況とは思わなかった。もっと余裕があると思っていた。」
と必ず言われる。
器も沸騰温度と同じで溢れなければ騒がない。
この師匠から聞いた沸騰温度の話を思い出す度に、人には見えない一線があるといつも感じている。

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