人の欠点と自分の間抜け

これは大分前の話だが、ある家元がお手伝いさんの悪口を、「あの子は料理とか片づけはまあまあいいんだけれども、雑巾がちゃんと絞れない。だから床を拭いた後、少し濡れている。そこが問題。」とよく言っていた。私から見たらその程度と思ってしまうが、その家元があるとき、「実は困った事が起こった。赤坂で突然声をかけられ、相手はこちらのことをわかっているみたいなんだけど、こっちは誰だかわからない。弟子も多かったから昔の弟子だとは思うんだけど、誰だか思い出せない。相手がどんどん話を進めてしまうものだから、誰だっけと聞き出すタイミングをなくしてしまって、話の流れでハンドバッグをプレゼントしたいという話になり、買ってもらった。買ってもらったのはいいんだけれども、誰だかわからないので礼状が出せない。ハンドバッグもなんか使いにくくて、そのままにしてある。これには困った。」と言う。有名な家元だったから、話が始まってしまって今更名前を聞くのも失礼というのはわかるが、ここまで来ると間抜けである。よく考えてみると、このお手伝いさんの雑巾と家元のハンドバッグ、欠点で見たら、家元の方が問題だと思ってしまうのは私だけの感覚だろうか。

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