これは以前聞いた話だが、とても思い出深いのでお話したい。
例えば患者から、「これだけ通っても全然良くならない。」と言われればほとんどの先生は、「私だって一生懸命やっています」と答えるだろう。しかしその先輩は、「そうですよね。良くなっていないですよね。私も困っています。どこか良い所知りません?私も腰が悪いので私が知りたいぐらいです。教えて下さい。」と言って、その後「良かったら一緒に探しましょう」と言ったら、患者が黙ってしまったという。
また接客の仕事で我が儘な客に対して、店長が対応に当たっている時、必ず新人を横につけて、その新人がバタバタ動いているところを見せるという。そうすることで「何か店長も忙しそうだなぁ。じゃ、まあこれくらいでいいや。」という気持ちにさせる環境を作るという。
仕事では「お客様」なので、中々本音が言えない場面は多く、本人の中では怒り心頭で口にも顔にも出せないだろうが、上記のような対応は役者が一枚上の感じがする。
日本では昔から、「殿ご乱心」で「お諫めする」という言い方をするが、冷静に相手の立場を重んじ、でも状況が許さないということを暗黙の状態で悟らせるわけである。
中々の高等テクニックだが、社会生活の中では時々散見する。
何時の世も感情的になる方は後を絶たないが、先人の知恵で学ぶところはとても多いと感じている。

