日本人の半分ががんにかかり、かかった方の半分が亡くなる現実を見ていて、誰もがもっと簡単にがんを早期に見つけたいと思っている。
昔に比べ胃カメラも細くなったし、鼻からも入れられるし、寝ている間にもやってくれる。
大腸も昔は注腸検査と言ってお尻からバリウムを入れるきつい検査をやっていたが、今では3Dで簡単に調べられる。
男性は肺がん・胃がん・大腸がんと死亡原因が続くが、消化器のがん受診率は低く、中々早期発見に至っていないのが現実である。
女性は乳がん・大腸がん・胃がんでマンモグラフィなど痛みを伴う検査が嫌がられている。
そんな中何か新しい方法で早期がんを調べられないかと研究をしている方達がいる。
「がん探知犬」
人間の100万~1億倍の嗅覚を持つと言われている犬に患者の尿の臭いを嗅がせて判定する。ほぼ100%の発見率だが、何処にがんがあるかはわからない。そして犬を訓練するのも大変である。狩猟犬として嗅覚が発達している犬種でも、ひと握りの集中力の高い犬しかなれないという。現実は高い集中力が必要な為日に数検体しか出来ないという。それ以上調べさせると感度が落ちる。
「線虫」
犬と同等もしくはそれ以上の嗅覚を持つ線虫に一滴の尿の匂いを嗅がせ、線虫が集まるかどうかで判定する。これもかなり高い確率で判定出来る。現在がんの識別のために線虫を遺伝子組換えをして実験している。費用もかからず30分程度で出来る。
「唾液」
一滴の唾液の中にでてくるがんの代謝物を見つける。尿より簡単である。
私の師匠はBi-Digital O-Ring Testを使い、がんの時に出てくる粘着物質(integrinα5β1)という物質や、遺伝子が突然変異を起こしたときの物質(8-OH-dG)を検出して早期がん検診で成果を上げている。私自身、20年以上現場を見ているが、がん研などで大体見つかるのが1000人に1人、Bi-Digital O-Ring Testだと70人、約70倍の精度で見つかる。私自身、自分で手に追えない患者を師匠に送り、何人もがんの早期発見をして頂いた。様子を見ていると大体発症する7-8年前に指摘され、発症したときには極めて大難が小難、無難程度ですまさせていただいている。
やがてはコンビニで唾液や汗などをほんの少量調べるだけで、がん検診が出来る時代がもうそこまで来ている。
これも先人の方達の努力と犠牲のもとに成り立っている。
今年一年、先人を思い親から頂いた身体を大切に生きたいものである。
■線虫の詳細な話(http://www.nanpuh.or.jp/ones-impressions/ones-impressions-151104.html引用)
その広津崇亮(ひろつ・たかあき)先生が、「九州のチカラ(未来を担う人材)」(日経新聞、10月30日)というシリーズで、「がん診断 線虫で革新挑む」というタイトルで紹介されている。もともとは「線虫」の専門家であったが、ひょんなきっかけから「人間の嗅覚を解明する研究のために使っていた線虫をがんの診断に使える」ことに気づかれた。すなわち「人の尿を線虫に嗅がせると、がんの有無を精度よく判定できる」ということを。
現在、がんを調べる腫瘍マーカー検査は数千円以上かかるが、この検査を使うと一回の検査費用は数百円ですむという。その結果、医療費の軽減にもつながることになり、がぜん注目を集めている。
広津先生は現在43歳と新進の科学者であるが、当院の医療支援課長の吉永君が東京での「次世代がん診断サミット」という研究会に出席した織、当院との臨床共同研究の話も持ち上がったということである。今後の発展が楽しみである。
どうして「線虫を使って・・・」と誰しも思うことだが、広津先生はインタビューで次のように語っておられる(放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログから、一部省略)。
「この大発見は、2年前の、胃内視鏡のエピソードに始まります。伊万里有田共立病院の園田英人先生(外科部長)が、胃痛で来院した患者さんの内視鏡検査をしたところ、アニサキスが胃壁に喰いついているのを見つけ摘除しました。アニサキス症というのは、鯖(サバ)などによく寄生していて、鯖を食べた際に胃の中に入ると、胃壁に食いついて激痛を生じるという、比較的良く知られた病気です。ところがこの症例では「アニサキスの喰いついている部分に早期胃癌があった」という非常に稀な現象が観察されました。園田先生はその後論文を書かれましたが、調べて見ると、それまでに世界でアニサキスが胃癌に食いついていたケースが28回も散発的に報告されていたそうです。注目すべきことに、Stageについて記載があった25例のうち18例がStage I(早期)でした。また腫瘍マーカー(CEA)は、計測された15例中たった1例で上昇してるだけでした。このため、園田先生は、「胃がんからでる『微量の匂い』」にアニサキスが反応しているのではないかと思い、インターネットでこれに関して基礎研究をしている人がいないか調べたところ、ごく近くの九大にいる広津先生がヒットした、という、スゴイことなわけなんです。
広津先生曰く「僕らは、線虫の嗅覚神経を詳しく調べていたのですが、それを一種の『センサー』として使おうという発想はありませんでした。世界の同様な研究者も、こういった発想はなかったと思います。園田先生の洞察力と、広津先生がいままでされていた基礎研究が、奇跡の符合をみた瞬間でした」。