以前、右五十肩をやったご婦人が今回は左五十肩だという。右をやった後よく反対側に出るので、これは珍しいことではない。前回、鍼がよく効いたので、今回の左五十肩にも鍼を打ってくれと言う。しかし今回は鍼を打たずに治療が終わってしまった。「どうして使わないのか?」と聞かれたので、「右肩の時は周りの筋肉の環境がよく鍼が効くことが打つ前にわかった。しかし今回の左肩は周辺の筋肉の環境が良くなく、鍼は前回ほど効かない。環境が揃えば打つが揃わないので、使わない。」と説明したら、「それでもいいから打ってくれ。と言いあまり納得されなかった。「今回左に打ったら、右ほど効かないので、どうして右はあんなに効いたのに、左は効かないのだと必ず質問が来る。肩は周辺にかかわっている筋肉が十数本あり、神経も狭い隙間を通っている。肩関節が360度動くために複雑な構造になっているので、少しの悪条件でも鍼は効かない。前回右の時に効いたので打って欲しい気持ちは分かるが、左に打ってがっかりずるだけというのは見えている。だから1番良い方法で治療した。たまたま鍼は必要なかった。」と説明したら、「そんなものかね。」といった感じだった。患者さんの気持ちも分からないではないが、鍼はただ打てば効くのではない。環境や条件が揃わないと効かない。長年やっているとそれがわかるので、むやみに使わない。おそらくベテランの先生方はそこがわかっているのだと思う。ただ打てば良いというものではない。
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