少し専門的な話をします。五十肩や肩の痛みの場合は肩関節の前面に痛みがよく出ます。我々から診ると筋肉が硬かったり、靱帯が伸びなかったりなので、問題のあるところに鍼を打ったりするのですが、神経ブロックの先生から診ると神経の通り道に打ちたいわけです。筋膜リリース(ファシアリリース)の先生からすると筋膜に問題のあるところに打ちたいわけです。各々専門的な立場から狙いたいところが微妙にずれます。以前、五十肩で肩が動かない方に神経ブロックの注射を勧めたら、「痛みは楽だけど動きは変わらない。先生に教えてもらったところに確かに注射をした。」と言うのです。詳しく調べたら、私が考えていたところから2cmずれていました。私は関節が良く動くために「烏口上腕靱帯 うこうじょうわんじんたい」に打って戴きたかったのですが、ブロックの先生は腕神経に打ってしまった。病院でもこういう事が起こります。お腹の痛がる患者さんを外科が診たら盲腸かなぁと思いますし、内科が診たら急性胃腸炎かなぁと思います。産婦人科が診たら生理痛かなぁと思いますし、腎臓の先生なら腎臓結石かなぁと思います。皮膚科が診たら、帯状疱疹かなぁと思います。1人の患者さんの身体なのですが、これだけ違うわけです。こうなるとある程度は患者さんが理論武装をする必要があります。当院では寺子屋方式で、長い時間をかけすこしずつ教育をしています。そういう経過をたどらないと中々良い医療を受けられないのが現実です。
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