昔からある薬は他の薬とキャンセルしにくいという記事は以前に書いた。患者さんに話をしながら一つ忘れていたものがあった。それは「ういろう-正式名は透頂香(とうちんこう)」である。これは仁丹みたいなもので名古屋の名産とは違う。元々ういろうは中国の王が被る冠の匂い消しに使われていたと言われ、日本に伝来した後は外郎家が代々その製造に従事する事になったという。銀粒で麝香(ジャコウ)や薬用人参、龍脳(りゅうのう 木からしみ出した樹脂が結晶化したもの)や甘草、生薬や薬効のまだわかっていないものなどを十数種類混ぜて作ったものである。ネットでは買えず、小田原に行くしかない。効能は万能で調べてみたら「胸腹痛、渋腹、胃痛、食中毒、霍乱、胃痙攣、消化不良、下痢、吐くだし、水中、癪痞、溜飲、悪心嘔吐、食欲不振、急性慢性胃腸炎、諸毒消、便秘、蟲積症、胃回虫症、肝臓、悪阻、酒の悪酔、宿酔、船車、乗物の酔い、眩暈(めまい)、気欝、疲労、気付、感冒、息切、咳、痰のつかえ、気管支炎、頭痛、駆風、暑寒中、日射病、高山病、心臓病、心悸亢進、心臓補強、強壮、発生過度、声の嗄れ、咽頭炎、身体違和感、口内炎、歯痛、牛馬家畜諸種の疾患、伝染病予防、其他急病に用いて良効あり。」と書いてある。一番使われるのはお腹や喉である。どことなく懐かしい感じがする薬で、原材料が手に入らないことから大量生産が出来ないと聞く。毎回思うが歴史のある薬の安心感は絶大である。多少飲み過ぎても問題がない。おそらく昔の方はそういうことも計算に入れて処方したに違いない。先人の知恵に感謝である。
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