久しぶりに女優さんが来た。3ヶ月ほど舞台が続き、かなりきつかったみたいで手がしびれるという。身体を診たら手のこりが酷く、「昔の専業主婦みたいに家事に明け暮れている感じだが・・・。」と言ったら、「そうかもしれません。舞台のことから裏方さんまでこなしている。」と言う。しかしこの方は体力があり、おそらく他の友達と遊んでいても、「もうちょっとやろう。」と言っても他の方が、「もう疲れたからいい。」と言うのではないかというぐらい元気である。よく聞く話は旅行に行って宿に着いたとき、元気な方は、「さあ、これから何処かへ行こう。」となるがそうでない人は、「やっと宿に着いたのだから、夕食までゆっくりしたい。」となる。夫婦間でもよくある会話である。しかし仕事が役者となると体力が必要なことは事実だが、少し困った事があると思う。それは人の痛みを感じにくいことである。脚本でも主人公が順風満帆に生きた話など物語にならない。色々と耐えて乗り越えたところに人は感動する。だから元気すぎると余程注意をしないと感性が鈍る。だから、「あなたの場合は例えば食堂に行っても一番安いところから超一流まで両方味わいなさい。それでその幅を学びなさい。人も弱い人をよく見なさい。元気な方は見てもあまり学べないが、弱い人からはおそらく学びが多いでしょう。我々も元気な人は殆ど来ませんから学びは少なく、なかなか治らない方を徹底的に診ていく中で悩み考え学びます。役者も同じだと思う。そして自分が何か怪我か病気の時は大切にしなさい。滅多にないのだから、そういう時に何を感じ、どんな心理状態になるかは大事だと思います。」そんな話をしたら、「わかりました。」と元気に言っていた。将来のある女優さんなので楽しみである。
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