患者の思い通りの先生

以前師匠から、「親の思った通りに子供は育たない。子供の思った通りの親になればいい。」と教わった。この教えは我々の仕事にも当てはまる。腰痛の患者が中々良くならない場合、患者は内心「ちょっとよそでも診てもらうか。」となる。そんな時、担当の先生から、「そんなの何処で診てもらっても同じ。行くだけ無駄。」と言われれば患者はしょげて黙ってしまう。しかし先生から、「それは良いことですね。ぜひ、その先生がなんて言った教えて下さい。」と言えば、「はい、わかりました。ちゃんと報告します。」となる。患者は我々に「許可」が欲しいのである。それを我々が、「あなたは黙ってうちに通っていればいいのです。」と自分の思うようにすれば、患者から、「通っているけど治りが悪い・・・・」と本音が出なくなってしまう。しかし患者のやりたいようにすれば、「色々と行って見たけど、○○はダメ、△△はいまいち、□□は論外。」と情報収集が出来る。それに対して先生が、「何かいいのあった?」と聞けば、「先生の治療と□□を組み合わせると良かったです。一番効きました。」と患者との関係は良好になる。我々が専門家だからと言って全ての治療を知っているわけではない。結構患者から教わることは多い。私などは、「何それ、教えて。資料送って」とすぐに言ってしまうが、「患者の思い通りの先生」になることはとても大事である。以前、近所の神経内科の先生が、家内が何を言ってもちゃんと欲しい薬を出してくれた。それを聞いて、「それはいい先生だ」と言ったことがあったが、ちゃんと医学知識を持った先生が、患者の要求を満たすことはとても大事である。結局、何でも出してくれるので、全て自分の病状をその先生に相談していた。まさに、「患者の思い通りの先生」であった。一昔前は医者がふんぞり返っていた時代もあったが、今はそのやり方では患者は来ない。昔から聖職と言われた、「警官」「医者」「学校の先生」も段々我々に近くなってきていると感じている。時代の流れである。

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