優等生患者

頚を痛めて通っている常連さんが、今までの処方が効かなかったので、薬を漢方に代えたという。処方の内容を聞いて、「ちょっといまいち」と思っていたら、薬をもらうときに薬剤師からも、「効かなくても飲み続けてください」と言われて疑問を持ったという。強い痛み止めが出ているので胃薬は頂いてはいるが、胃薬が効いている感じがしない。こういう場合、優等生患者だと、「まだ飲み始めたばかりであまり効果は感じません。」と言うだろうが、これは患者が医者に気を使っているから出る言葉で、そういう場合は、はっきり、「全く効いていません。」と言いなさいという話をした。患者心理として、「先生の前に座ればあちらは医学の専門家なのだから、私のことはわかってくれているはず。」と思いたいだろうが、全くそんな事はない。患者が、「あまり効果を感じません。」と言えば、医者は、「もう少し続けて」と言うだろう。しかし患者が、「全く効いていません。何ですかあの薬?」と言えば、変えざるを得ない。短い診察時間の中で、患者の病態を把握するのは不可能である。だから出された薬が、どうなのかありのままに言えばいいのに、患者が医者に気を使ってしまい、その結果として、患者がいい医療を受けられなくなっている。当院の常連さんの中には、「前回の治療は○○がダメだった。今回は△△にして下さい。」と言われ、その通りにしたら、「前回のでは効いていませんでした。今回は□□で試しましょう。」と言われ又やったら、「あれも良くなかったですね。いっそのこと、◇◇はどうですか?」とコミュニケーションを取っている患者がいる。毎回これだけ話をしてすりあわせても、まだまだ患者の病態は掴めないものである。いい医療を受けたいと思ったら正直に医者の処方の感想を言い、ダメはものはダメ、いいものはいいとはっきり言わないと結局患者の不利益になることを知っていて欲しい。医者の前で優等生患者になる必要は全くない。

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